「エンジン焼付き修理」(2005/10/30)

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2004年8月に奥さんの通勤快速の新車購入したアドレスV100(CE13)が盗まれてしまい、その補填として友人から修理ベースの事故車をもらい、こいつを素直に直そうかとも思っていましたが、奥さんの提案で別に部品取り用のアドレスV100をネットオークションで落札して所謂「ニコイチ」する、というアイディアに私も賛同し、ネットオークションで奥さんが落札した車両が「部品取り車」として出品されていたものの、そのまま実働可能なものだったので、その車両を奥さんが通勤快速として使い、友人から貰った事故車の方は私が別に直す事にしました。(2004/11頃の話)

奥さんが通勤快速に使用していたV100はエンジン音が煩かったが、まあ、動いているからそのまま使っていたが、2005年の6月頃だっただろうか?会社から帰ってウチにいたら奥さんからTELが、、、いつものように駅からバイクで自宅に向かう途中でエンストして2度とエンジンがかからなくなったとの事。

途中まで押して来たが、自宅最寄の心臓破りの坂の麓にいるが、心臓破りの坂を登れそうに無いので、バイクを乗り捨ててウチに帰っても良いか?との事。そんな事問われても安直に「あい、構いませんよ」と言えるわけも無く、奥さんとV100をその場に待たせて、スカイウエーブ400で現場に向かった。

何度か私がエンジンをかけようと試みてみたが、エンジンはかからず、結局、スカイウエーブ400で牽引して心臓破りの坂を登る事にした。一旦自宅に戻り、タイダウンベルトを持って現場に戻り、スカイウエーブ400とV100を連結して、牽引開始。

私がスカイウエーブ400で引っ張り後ろで奥さんが跨ったV100を牽引しようとしたが、パワーが足りなくて、どうにも上手く登れない。仕方が無いので、奥さんにはバイクを降りてもらいV100を倒れないように保持しながらの状態でスカイウエーブ400で引っ張る事にする。この方法だと奥さんの歩調にも合わせなくてはならないので、よりゆっくり牽引する必要があるがスカイウエーブ400は自動遠心クラッチなので、歩調に合わせたゆっくり牽引が、ちょうど半クラッチ状態を多用する事になり、クラッチがかなり加熱して、牽引中にクラッチ周辺から白煙が出てきてしまった。クラッチをいたわる為に、坂の途中で2、3回休憩を挟んだが、クラッチよりも奥さんの方が何故かヘロヘロになっている?登りきった後に奥さんから話を聞いたら、倒れないようにサポートしていただけでなく、押していたとの事。押す必要は無く倒れないようにサポートしてあとは普通に歩いてくるだけで良かったのに、と伝えたが、だって押さなかったら登って行かなかったよ、との事。私は奥さんの歩調に合わせてゆっくり牽引したのが、奥さんにはパワー不足でゆっくりとしか進めなかったと勘違いして、必死に押していたらしい。チームワークとは声を出し合って意思の統一を図らねばならない事を再確認^_^;

何とか自宅までたどり着いたものの、スカイウエーブ400の駆動系のほうが心配な状況に、、、、半クラッチが出なくなって、駆動が繋がったままになってしまい、まだ白煙も出ている、センタースタンドを立てた状態でアイドリングでも後輪は回り続けた。本当はエンジンをかけておいた方がプーリの裏についているファンも回って駆動系の冷却には良いのは知っていたが、エアーコンプレッサーで駆動系のエア抜きの穴からエアーコンプレッサーでエアーを吹いて冷却してやるから、とエンジンを一旦止めたら、クラッチケースのプラスチック外装の一部が溶けかかって凹んでしまった。やはりエンジンはもう暫く回しておいた方が良かったようだ。

さて、V100だが、このように完全にエンジンがお亡くなりになる前の1,2ヶ月前から、奥さんは不調を訴えていた。オートマなのにエンストする、とか、エンジンがなかなかかからない、とか、セルモータでエンジンが掛からなくなったとか、、、など。

この訴えに対して、私は何もしなかったかと言うと、少しは働いていた。奥さんからの訴えを確認するべく、自分でV100を走らせてみて、音は煩いが、パワー感は盗まれた新車購入のCE13よりもあるし、音に関しては強制空冷のファンがファンケースと接触している音で、ファンを換えれば解決する問題、と友人に聞いていたので、取り急ぎどうこうしなくても良かろうと音に関しては放置。始動性の悪さは通勤快速にとっては小さくない問題なので、プラグを新品に交換した。セルモーターでエンジンがかからない件は、明らかにセルモーターが空振りしているようなので、スタータクラッチ周辺の故障なので、そのうち直してやろうとは思ったが、キックではエンジンがかかっていたので、取り急ぎどうこうしなくても良かろうと思っていた。

まあ、その結果が、このような事態を引き起こした訳だが、、、、

故障の原因が何なのか?という推論をアレコレ考えるよりも、この車両は部品取り車の筈だったのにとりあえず動くから使っていた、という、素性のはっきりしない車両を私の手による整備をしていない状態で使用していたのがいけないような気もしたし、あえて推論を回すなら焼き付きの可能性も高いので、エンジンを下ろして点検&修理をする事とした。

スクーターは機能部位の患部に辿り着くまでに、外装を剥がしていくという儀式が必ず付いて回る。私はあまり好きではない作業だが避ける訳にもいかないので地道に剥がしてゆく。

 
センタースタンドがエンジンユニット側に付いているので、車体側をジャッキアップしておいて、エンジンと車体をつなげているピボットシャフトを抜けば、エンジンユニットはセンタースタンドと後輪とで独立して立っていてくれるのは整備性としては悪くないが、その他、細かいところは整備性はあまり宜しい車両とはいえないなぁ。

シリンダーを外し、ピストンとシリンダーの内壁の確認をするも、よくもここまで!という感じで、思いっきり焼き付いている。ピストンリングの1本はカシメられたような状態で外側への張力を発揮できない状態で、圧縮漏れを起こしていたのだろう。これが最終的にトドメを刺した原因であろう。パーツリストを見ると、他の車両などでも同様だが、パーツリストを見てみるとメーカーからは0.5mmと1mmのオーバーサイズのピストンが出ているので、ショップにオーバーサイズピストンとシリンダーのボーリングを注文しても良いのだが、ネットオークションサイトを見てみると、結構安価で補修用のピストンとシリンダが入手できるようなのでこちらを購入してみる事にした。V100は輸出しているのか現地でのノックダウン生産なのかは知らないが、台湾にV100はたくさん生息しているらしく、入手した部品も台湾製のようであった。

但し、台湾製は加工精度と言いますか、仕上がりがあまり宜しくなく、ピストンリングの合口の切断面にバリがあったり、シリンダ内壁のポートの穴周辺もバリっぽかったりしておりました。
このV100が壊れて以来、奥さんの通勤快速はKSR2であり、バイクとしての面白みという観点では全く問題無かったのだが、スカートで乗れないとか(そもそもバイクはスカートで乗るのは感心できない筈だが)季節が寒くなってくるとコートを着て乗れないないとか、言い出しまして、早く直せ!との要求が強くなってきた。

従って、パーツ類は手配済みで手元にあったにも関わらず故障してから何ヶ月も完成させないまま、のんびりしていたが、重い腰をあげそそくさと仕上げなくてはいけない必要が出てきた。もっともその数ヶ月間何もしていなかった訳ではなく、GARAGEささをにはやらなくてはならない仕事が沢山あり、その優先順位をどう付けるか、だけの問題だったのである。

また、このV100の修理を7月頃にシコシコとやり始めていた頃もあったのだが、バラしたパーツを夜夜中にパーツクリーナで洗浄中にガレージ内に充満したパーツクリーナが何かに引火して、足を火傷してしまったという事件もありPTSD(心的外傷後ストレス障害)とまでは行かないが、火傷の影響でV100の作業に対して、特別に腰が重かった、というのもあった。

 

ピストンを外したところ。例のごとくピストンピンは叩き出さないと抜けなかった。
せっかくエンジンを下ろしたのだから、と、キャブレターも全バラにして洗浄&オーバーホールした。駆動系もランププレートを新品にしたりウエイトローラも偏磨耗していたので新品に交換したりもした。

セルモータの動作不良に関しては、セルモータギアユニットの動作不良かと重い、動作確認済みの中古のセルモータギアユニットをネットオークションで安く入手したが、最終的に分かった事は、バッテリーがかなり元気でないとセルモータギアユニットは正常に動作しないという事だった。

ここまできても、焼き付きの真の原因は何だったのだろう?という疑問は置き去りのままだ。

ネットオークションで入手した車両であるから、過去の素性というものは良く分からない。

 

例えば、エンジンのオイルポンプやキャブレター等の補機類に何の異常が無いとしても、前ユーザーがエンジンオイルを切らせてしまった状態で乗り続け、軽く焼き付かせてしまった。その後、オイルを入れてエンジンをかけたら掛かったから乗り続けていた。とした場合、やはり一度、軽いとはいえ焼きついたエンジンは、シリンダとピストンの焼き付いた部位が次の焼き付きの原因になってもおかしくないともいえる。

ただ、この場合は、シリンダとピストンを正常にしてやれば修理は完了する。が、他の要因かもしれない。ガスが薄い、薄過ぎるのも焼き付きの原因であろう。念のために今回、メインジェットを大き目の番手に換えておいた。エンジンオイルが正常に供給されていないとしてもエンジンは焼き付く。

オイルポンプを回す為のギアが回転している事は、セルモータを回す事によって確認は出来たが、オイルポンプそのものが正常に動作しているのかを確認するのはなかなかに手間の掛かる作業である。

ガソリンにエンジンオイルを混ぜた混合ガソリンを作り、何らかの方法でキャブレターに供給し、メンテナンス用のタコメータを取り付け(V100にはタコメータが付いていないから)、エンジンをかけ、サービスマニュアルに記載されている回転数を保ち、その時のオイルポンプの吐出孔から出てくる1分間のエンジンオイルの量を計測して、正常か否かを確認しなくてはならない。

過去にKSR2などでも焼き付を経験したが、オイルポンプの動作確認をこういう方法でやった事が無い。

また、若干疑わしいとして、予防修理として交換するにしてはオイルポンプは安く無いので結果、そのままとなる。

画像は取り外したトルクカム周辺パーツ洗浄して再利用。
 
その他、もろもろの駆動系パーツ。同じく汚かったので、洗浄。

クラッチとドリブンプーリ以外は取り外した状態。
駆動系のカバーもかなり汚かったので洗浄。

いずれにしても、エンジンは組み上がり、車体に取り付け、各種配線をして、外装を取り付ける前にエンジンをかける。直ぐにはエンジンは掛からなかったが、キャブレターのアイドリングアジャスタを調整する事により、エンジンは掛かった。エンジン音は凄く静かで、元々の異音は強制空冷のファンからではなく、エンジンからだったようだ。
焼き付いたシリンダとピストン。

いやー、見事な焼き付き具合ですねぇ。。よく見るとピストンの端がせり上がっている程です。
シリンダ内壁ももちろんガビガビ。。。。


そのまま、近所を走ってみると、何の問題も無く走れたので、外装を取り付け、ついでに余っていたGIVIのトップケースのベースをキャリアに取り付けて完成。

そこからさらに、私が試し乗り、、、、問題なし。次に奥さんが試し乗りして同じく問題なし。

これで、数ヶ月間不動だった車両をやっつけて、気分もよく、他のガレージ仕事をしていたら、奥さんが直ったばかりのV100で近所のスーパーに買い物に行くが、良いか?と、問うてきた。私はもう直ったんだから当然OKだよ、と許可を出す。本来はピストンもシリンダーも新しいので慣らし運転的ないたわり走行とかの心がけも必要なのだろうが、最高速チャレンジをする訳でもなく無段変速のオートマ車でスーパーに買い物に行くくらいで回転を抑えて云々の注意事項を言うのもナンセンスと思って何も言わずに送り出した。

それから私は他のガレージ仕事を行っていたが、トイレの為に一旦家の中に入ると、奥さんからの留守電が入っていた、携帯の方にも着信履歴があったので、いやな予感とともに、奥さんの携帯に電話してみると、スーパーに辿り着く前に1回異音と共にエンストした、その後エンジンはかかったけど、不安なのでバイクを押してスーパーに来て、現在は買い物中との事。

仕方が無いので、私もスカイウエーブでスーパーに行ってみる事にした。スーパーで奥さんからV100の鍵を受け取りエンジンをかけてみたらすんなりエンジンは掛かった。私がV100を運転して帰路に付く事にしたが、メーターを見るとガソリンが殆ど無い事に気がつき、ガソリンスタンドへ(運が良ければガス欠で済むかな?と淡い期待を寄せる)、ガソリンを満タンにして帰路の途中、ムーンッという音と共に失速&エンスト、流石に何度か焼き付を経験している私は、こりゃ焼き付いた、と確信。ハァー。。。。。(~o~)

その後、エンジンをかけようとすればエンジンは掛かるものの、30m位走行するとムーンッという音と共に失速&エンストする。それを繰り返し自宅に徐々に接近して行ったが、流石に最後の心臓破りの坂は乗ったままでは登れる程のエンジンパワーは出ていない。エンジンをかけて、押し歩く(実際には走った)感じで、坂を上りきるまでに2,3回エンストしながらも何とか自宅に到着。
 

翌日、エンジンをバラしてみると、予想通りの焼き付でした。

元々のエンジンの焼き付きの真の原因が分からないまま修理を済ませたから、また、焼き付く可能性はある事は自分でも覚悟していたし、奥さんにも伝えてはいたが、、、、、やはりショック、というか脱力感に包まれた。

新しい、シリンダーとピストンを発注し、今度はオイルポンプアッシも新品を注文した。

オイルポンプは吐出口から3つに分岐しており、1本はリードバルブ手前に供給されキャブレターからのガスと一緒に吸い込まれる所に行っていて、残りの2本はクランクシャフトの支持ベアリング周辺に圧送されているように見える。しかし、この辺のオイルの経路が妙に乾いているように見える。やはり、オイルポンプが怪しいよなぁ、、と、思って今回はオイルポンプアッシも新品注文した。

エンジンにピストンやシリンダを組み込む際に、初期焼き付き防止の為にシリンダの内壁やピストンにZOILをだっぷりと塗布して組み付けていたが、それだけの潤滑であれだけ走れたという事も無いであろうから、オイルポンプは完全に死んでいる訳ではなく、半殺し状態なのであろう。組み付ける際にやはり焼き付き防止策として、オイルポンプの引きワイヤをオイルを多く出すようにも調整してまでいたんだけどねぇ。。

なかなか仕事が減らないねぇ。。。。

 

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